扶桑会について
指導者: 石塚嘉 【達人・名人・秘伝の師範たち】
稽古日時:日曜14時半~16時半 / 木曜19時~21時
稽古場所:神道扶桑教 世田谷太祠 東京都世田谷区松原1丁目7−20 【道場紹介】
入会希望者が参加可能な公開稽古は 6月25日(日)12時30分から14時30分まで開催します。
場所は 世田谷区総合運動場 体育館 第一武道場です。
扶桑会への入会を希望される方は 左のメールフォームよりお問い合わせください。
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稽古日時:日曜14時半~16時半 / 木曜19時~21時
稽古場所:神道扶桑教 世田谷太祠 東京都世田谷区松原1丁目7−20 【道場紹介】
入会希望者が参加可能な公開稽古は 6月25日(日)12時30分から14時30分まで開催します。
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其の四百三十六 からみつく 大東流合気柔術 扶桑会 
「柔術とは、からみつく術(わざ)なり」という口伝があるが、今回取り上げた動きはまさにその口伝通りの思考法を使っている。

袖をつかんで攻撃してきた相手に対して、その肘を曲げるように手刀を突き込み、腰を崩した上で倒してしまうというのが操作の概要である。
単純に言えばそういうことなのではあるが、もちろん実際にやってみると、なかなか相手は思う通り素直に崩れてはくれない。
やはりここで、「からみつく」思考法を援用しなければならない。
動画の中でも説明している通り、相手が掴んできたその瞬間に、接点を大きく動かしてしまうと、この「からみつく」動きの効果が薄くなる。
相手に掴まれたその部分を出来るだけ動かさない。動画では「空間の座標軸を変えない」というような表現をしてみたが、掴んだ側の感覚が極力変わらないように、つまり「掴ませたまま」の状態にしておく必要がある。

そのうえで、相手の腕に沿うように手刀の峰側、いわゆる橈骨の部分を使って相手の肘の内側に密着していく。
この時に力をぶつけることのないように、腕の操作と同時に身体を捌いて、相手の攻撃線の外側に立たなければならない。
以上述べた動きによって、「からみつく」ことが出来れば、相手を崩すという目的はほぼ達成されている。

受け手側の感覚を説明すると、自分が攻撃をしていたつもりなのに、何の抵抗もされないうちに腕にピタリとくっつかれたうえ、相手の身体は自分の死角に立っている、という状況だ。
さらに、力いっぱい掴んでいる自分の手首は、外側に折り曲げられている。その一連の動きには無理強いされた感覚がないので、手を離そうと思う間もなく、指が掴んだ相手の胴着の袖にからめとられている。

柔術、つまり「やわら」として派生し、発展してきた大東流合気柔術の動きのなかでも特徴的なのが、この「からみつく」考え方である。
動画とテキストでその核心の一端にでも触れていただければ幸いである。
其の四百二十一 乗せて制する 大東流合気柔術 扶桑会 
相手の攻撃が早く、強くなればなるほど、それに対応する技は緩やかで柔らかくなければいけない。
今回の操作は、そうした大東流合気柔術の特徴をよく表すものだ。

両手で胸倉につかみかかってくる相手に対して、こちらは攻撃を受ける直前まであたかも「掴まれるのを待っている」ように自然体のまま立つ。
そして相手が前襟をつかんだと錯覚するほどの瞬間に、できるだけ緩やかに体全体を捌いて、攻撃線の外側に身体を置く。
同時に、流れるような動きで相手の掴み手を下から掬い上げるように触る。
この時相手の激しい前進の勢いを、こちらの体幹部分と接続させるような意識が必要だ。

動画内ではこれを「自分の重心の上に乗せる」と表現しているが、ここが最初の一挙動にして技の成否を決定づける操作となる。

流れるような動きが求められると書いたが、具体的にはこの操作を肩から先の動きで行っては相手とのぶつかりを生じさせてしまう。
腕を動かすのではなく、「腰を使って相手の腕を挟む」感覚と言えばよいだろうか。

腰から発する力で身体の末端を動かしていく。
これこそがいわゆる「柔らかい力の発揮」だと扶桑会では考えている。
其の四百十二 捌いて制する 大東流合気柔術 東京稽古会 
攻撃を仕掛けてきた相手を、その力に逆らうことなく制してしまう。
今回は、大東流合気柔術「小手詰」の操作法を通じて、そうした考え方を解説する。

相手の攻撃は胸取りである。足を踏み出し「なんば」の動きで胸をつかみに来る。
そこには必ず攻撃線が生じる。
その時、相手との接点に手刀で軽く触れながら攻撃線を挟むように内から外に身体を捌く。

この「軽く触れながら」というところが非常に機微なのであるが、強い力で操作してしまうと相手もまたそれに呼応するように力をぶつけてきてしまう。
あくまでその接点に手首を留めておくだけ位の心持で「小指だけをひっかけるようjに」自分の身体だけを動かしていく。

この操作によって、相手の心理的には反撃を受けたような自覚がないままに、大きな力を手首関節から肩にかけて受けることになる。
体感してみれば良く分かることであるが、相手の腕による攻撃に対して、全身の力を効率よく伝えるわけで、抗いようのない形で体の自由が奪われてしまう。

さらにこの操作には、自分の重心、すなわち地球の引力と合致した軸に相手を引き寄せ、そこに「乗せて」しまうという要素もある。
そのあたりの考え方については、また項を改めて述べることにしたい。
其の三百八十五 逆襷 大東流合気柔術 東京稽古会 
相手の攻撃に対して自分の体勢を崩さずに応じる動きについて、これまでに何度か解説を加えてきた。
今回の操作法ではその動きから転じて相手を崩すために働きかける。

当然のことながら、攻撃を仕掛けてくる相手も最初から自分が技をかけられて倒されることを前提にしているわけではない。
こちらを圧倒し、制することを期して立ち向かってくるのである。
そういう相手に対して効果的にこちらの力を伝えるために、古武術では脱力の思考法で応じていく。

逆説的に聞こえるだろうが、この逆襷の動きもまさにその思考法を体現したものだ。
中段を突いてくる相手に対し、その攻撃線に沿うように身体を捌く。腰を中心に動いていくことはこれまでに見てきた通りである。

さらに相手の裏に入り身しながら、腕を斜めに巻き付けるように相手の腕と首に伸ばす。
この時に自分の上半身を柔らかく脱力した状態で使えるかが成否を分ける。
腰で捌き、腰を中心に力を発揮する意識が、上半身の筋力を使わない操作につながるのだ。

相手に力を伝えるときこそ、接点ではなく自分の中心を意識する。
思考の転換が必要となるこの動きを、反復修練してほしい。
稽古日誌 令和4年3月10日、13日、17日、21日 大東流合気柔術 東京稽古会 
大東流合気柔術東京稽古会の稽古日誌。今回は3月中旬の記録です。
まずは3月10日(木)、扶桑教太祠 本殿での稽古。

合気上げ鍛錬法、片手取転換投、居捕逆腕捕、二カ条極めの4本。

相手に密着して操作する、重心を乗せるなど、繊細な身体感覚を修練しました。
これらはすべて大東流の奥義につながる考え方です。

この日は日本の伝統芸能「地唄舞」のお師匠さんが稽古の見学に来られました。

丹田を意識した動き、重力を真っすぐに身体に受ける姿勢。
武術と舞踊との間の共通点についても稽古後に皆で話し合い、楽しく意見交換させていただきました。

3月13日(日)の稽古には、大阪琢磨会より小林清泰先生が東京稽古会に指導に来てくださいました。

稽古は一本捕、逆腕捕、車倒、肘返など

主に大東流初伝の基本形に取り組みました。

技のディティールにこだわった指導を受け、初心者にとって有意義な時間となったと思います。

遠く東京にまでお越しいただき、非常に熱心に指導していただけることに感謝です。

続いて3月17日(木)、世田谷総合運動公園体育館での稽古。

手首の鍛錬を中心に基礎稽古。
鎌手詰、小手返、手刀詰、3カ条詰…

手首の鍛錬ではありますが、局部を意識するのではなく、全身の連動や、身体全体をさばいていくことが需要だということが改めて理解できます。

充実した稽古内容が、シブい表情でキメた写真でうかがえます。

3月21日(月・祝)は春分の日。新木場の東京スポーツ文化館での稽古。

一年ぶりの会場です。

稽古は大東流の特徴的な技法「搦める」を中心に取り上げました。

さらに相手の攻撃を受けた時と、はずした時の動きの違いについて。

生きた武術として稽古するためには、時には受けての動きを意表を突いた方法で処理していくことも必要です。

揺れ動く社会情勢や、人間関係の中で自分の軸を失わずに生活していくのも、一つの武術的思考スタイルです。

純然たる受け身で修練していては大東流合気柔術の核心部分をつかむことはできません。

自分なりの工夫をしながら取り組めるような稽古の流れを、今後はもっと多く取り入れて行こうと考えています。

其の三百七十七、取られる/取らせる 大東流合気柔術 東京稽古会 
自分の力を十分に発揮して、かつ相手の力はそうさせない。
武術に限らずあらゆる競技や交渉ごとにおいて、これが可能になれば達人と称されるだろう。

そのために重要なのは相手が仕掛けてくる「攻撃の受け方」だ。
今回は片手取りを例にして考えてみる。
大東流合気柔術の思考法として、中心の力を活かすということが必須である。
片手を取りに来る相手は人体の構造上、片足を踏み出して手を伸ばしてくる。

その踏み出した足の延長線上にいて攻撃を受けると、相手の中心の力は十分に生かされてしまう。
自分がその攻撃線から外れる位置に立って受けることもできるが、別の考え方もできる。

相手が取りに来る接点、つまり自分の手首を少しだけその攻撃線からずらすのだ。
もちろん小手先の動きになっては相手を上手に欺くことはできない。
微妙に全身を連動させて手首の位置を変えるのだが、ただこのようにするだけで相手は力を出せず、自分は比較的有利に事を運ぶことができる。

とはいえ、この操作は達意の人となるための極めて初歩の一段階であり、これをもって訓練を行うべきものに過ぎない。
基本的な操作法を身につけたうえで、起こりうる様々な状況に対応する術を導き出していってほしい。
其の三百七十四 半座脇挫 大東流合気柔術 東京稽古会 
相手が攻撃しようとしてくる場所から「いなくなる」という動きについて考えてみたい。

大東流合気柔術では初動で相手の攻撃線を外し、自らを有利な位置に置くことを基本的な考え方としている。
今回取り上げた半座半立(自分は座位、相手は立ち)の形「脇挫」においても同様である。
ただその運用法として、ぎりぎりまで相手に攻撃対象としての自分の姿を認識させつつ、まさに相手が自分をつかもうとするその刹那に、あたかも本体が消失するように動くことで、技の効果が発揮される。

自分の胸をつかもうと伸びてくる相手の腕を上下の手刀で挟む、その腕に沿うように体を密着させるなど、初動に続く動きの中に様々な要素が含まれるが、それらも全部この「相手の前から消える=いなくなる」という操作によって可能となるのだ。

またこの「攻撃線上からいなくなる」という考え方の要素は、一本捕や逆腕捕などあらゆる形の崩しの際に利用される。
それは「相手が崩れることのできる空間をあける」というふうに解釈を変化させていくことによって運用されるのだが、それはまた項を改めて解説していくつもりだ。

大東流の思考法としての「いなくなる」を実現するには、相手の心理状態を読み、操る過程が必ず含まれる。
これを考究していく中に、いわゆる「合気」につながる動きが現れるのではないかと感じている。
稽古日誌 令和3年 12月16日、19日、23日、26日稽古納め 
今年最後の更新となった大東流合気柔術東京稽古会の稽古日誌。
一年間いろいろな方の支えを受けて、稽古を続けることが出来ました。何よりもまず感謝の思いを述べたいと思います。
ありがとうございました。

12月16日(木)は明大前の扶桑教太祠 本殿での稽古。
毎週2回、美しく静謐な環境で稽古させていただきました。
ありがとうございました。

前回、前々回の本稽古の内容を中心に、密着と全身の連動を修練。
正面打ちを切返に崩す動き。

小手返、半座合気上から投げ倒しての受け身鍛練、最後に外脈極で手首の鍛錬。

小手先の力を使わないことの重要性を改めて感じる稽古になったと思います。

12月19日(日)は世田谷総合運動公園 体育館での稽古。

後ろからの攻撃に対処する後捕から、両肩捻。

同じく後捕、立襟捕。

こちらは片手取りに対して、双方の身体を伸ばして制する操作。

年末の稽古納めに予定されている昇級審査に向けての確認も大詰めです。

12月23日(木)、扶桑教太祠 本殿での稽古。

両手取に対応して相手の身体を詰め、可動域をうばう操作。

手刀を柔らかく活かして、密着して制します。

同じように両手取りを四方投。これは裏を攻めます。

手刀を剣に見立て、縦に操作することで力を伝える。毎回の稽古で繰り返し修練してきた要素です。

12月26日(日)、令和三年の稽古納めです。この日も扶桑教太祠 本殿を拝借して。

胸取を一本捕に制します。攻撃線の捌きと密着の要素。

正面打ちを切返に制する。これも同じく攻撃線の捌きと、手刀の密着。
ひとしきり今年目標にしていた重点動作を鍛錬したのち、2級の昇級審査。

一カ条立合、居捕、後捕の計16本を演武します。

修練の成果を十分に発揮して、合格です。
その後は恒例の、審査を受けて気になった点を全員で稽古。
逆腕捕の詰めを緩ませないように崩していきます。

稽古が終わった後は、一年間の感謝を込めて本殿の清掃。

東京稽古会では、毎回稽古後に拭き掃除を行いますが、この日はいつもよりも数段丁寧に拭き込みます。

コロナ感染症による緊急事態宣言が長く発出されるなど、社会情勢は困難なところもありましたが、会員諸氏の熱意、周囲の温かいサポートもあり、本年も充実した稽古を継続することが出来ました。
古武術である大東流合気柔術の修練を通じて、日本に古来から伝わる精神や知恵を現代に伝えていきたいという思いから、東京稽古会を始めて七年が経ちました。
常に初心に還りながら、また気持ちを新たに進んでいきます。

冒頭に記した通り、関係する多くの方々、また人知を超えた大きな存在にも感謝の念をささげて、一年の修行の締めくくりとさせていただきます。
合掌。
感謝。

其の三百六十三 正面打切返 大東流合気柔術 東京稽古会 
今回は正面打で攻撃を受けた場合に、切返で制していく動きを取り上げる。
これもまた、大東流合気柔術らしく上半身を脱力させるところにその妙味がある。

相手の打ち込んできた正面打を、手刀で受けとめる。
毎度のことだが、この時に攻撃線をずらし、自分に優位な立ち位置で受けることが重要だ。
次にあばら骨に向けて当身を入れながら、相手と横並びになる。
相手の手刀を受けた接点は自分の中心にあること。

さて、ここから相手の身体を崩すべく攻め込んでいくのだが、この動きがうまくいかない。
接点に近い腕の力で押し込もうとしてしまうのだ。

肩から先の力を使ってしまうと、自分が踏みしめている地面からの力は、切り離されて無効になってしまう。
全身を一つの塊として力を発揮するためには、上体を脱力することが必須だ。

ここのところは、日常の稽古でも常に意識を喚起してはいるのだが、実際に移すことが難しい。
「やわら」の真髄に至れば、拍子抜けするほどあっけなく相手は崩れてくれる。
たゆまぬ修練によって、その境地を進んでいってほしい。
其の三百五十七 内腕返 大東流合気柔術 東京稽古会 
顔面に殴りかかってきた相手を一挙動で搦め取って投げ返す。
大東流合気柔術らしいダイナミックな操作であるが、これも攻撃線の理解で可能になる。

前回まで、相手の攻撃線に密着するように捌き、あるいは攻撃線を延長させて相手の体勢を崩すことについて見てきた。
取り上げたのは中段突、または短刀取など相手の体幹部分から発せられ、まっすぐ自分の方に向かってくる攻撃だが、そういう時こそ有効になる考え方だ。

その上で今回特筆するのは、「相手の中心に向かって攻める」という要素である。

突きを放った相手の拳を柔らかくつかみ、肘の内側に手を当てて腕を折り込むようにして腰を回転させる。
この時に相手の拳を顔面に向けて折り曲げることで相手は大きく体勢を崩す。

実際に修練した場合に、思ったように腕を折ることが出来ずに難しさを感じるかもしれない。
上半身の脱力と、柔らかい腕の使い方に留意して稽古してほしい。