扶桑会について
指導者: 石塚嘉 【達人・名人・秘伝の師範たち】
稽古日時:日曜14時半~16時半 / 木曜19時~21時
稽古場所:神道扶桑教 世田谷太祠 東京都世田谷区松原1丁目7−20 【道場紹介】
入会希望者が参加可能な公開稽古は 6月25日(日)12時30分から14時30分まで開催します。
場所は 世田谷区総合運動場 体育館 第一武道場です。
扶桑会への入会を希望される方は 左のメールフォームよりお問い合わせください。
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稽古日時:日曜14時半~16時半 / 木曜19時~21時
稽古場所:神道扶桑教 世田谷太祠 東京都世田谷区松原1丁目7−20 【道場紹介】
入会希望者が参加可能な公開稽古は 6月25日(日)12時30分から14時30分まで開催します。
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其の四百三十七 腰で絡める 大東流合気柔術 扶桑会 
3月の本稽古では、「掴まれたところをそのまま維持する」技法を取り上げた。
つまり相手に「攻撃できている」と感じさせた状態で力を伝えていく思考法である。
今回はその最後となる操作法となる。
動きに名前を付けるならば「両手取り三カ条小手詰」とでもなろうか。

私たち扶桑会が取り組む大東流合氣柔術は、大東流中興の祖、武田惣角先生および植芝守高(盛平)先生が久琢磨師に与えた、柔術技法を基盤にした技術の体系である。
大阪琢磨会には「総伝」として数百もの技が伝わっている。
一般に後年、武田時宗師によって編纂された「初伝技」には明確な技の名前が付けられているが、「総伝」はそうした呼称はなく、所収の巻数と条文の順序だけが記されている素っ気ないものだ。
技にわかり易い名前を冠すれば表面的な理解には役立つが、その奥に含まれている本質が隠されてしまうこともある。
技を覚えて理合に到らず、ということになりかねないのだ。
その意味で、ある種無味乾燥な「総伝」の呼称にも合理性がある。

さて、長々と前置きを書いてしまったが本題の「両手取り三カ条小手詰」である。
この動きの本質とは何かというと、腕の力を使わずに相手の身体を極め上げていくところにある。
決して「三カ条に小手を詰める」ことではなく、掴まれた瞬間、その初動の中にもっとも重要な理合が含まれる。
すなわち、「腰で絡める」ことだ。

相手に手首をつかまれたとき、手刀を開いて親指を張る。
手刀の峰を相手の掌底の小指側にからみつけるようにして、縦に斬り上げる。
この時、腰を外から内に旋回させることで、相手に全身の力を伝えるところに極意がある。
この動きが効果的に使えるようになると、相手は抗いようのない大きな力を感じ、こちらの手刀にからめとられるように無力化されてしまう。
これが「腰を絡める」操作である。

「掴ませたまま」「絡めつける」といった概念は、いわゆる「合気」に通じるものだと、私自身は考えている。
「合気」については今後積極的に考察を行っていきたい。
稽古日誌 令和5年4月13日 16日 19日 大東流合気柔術 扶桑会 
大東流合氣柔術 扶桑会の稽古日誌です。今回は4月半ばの稽古内容を記していきます。
まずは4月13日(木)。

「下から攻める」という考え方をベースに研究しました。
相手に対して下から見上げるような意識で向かうことで、全身の力を有効に使うことができます。

「上から目線」という言葉がありますが、これはその対極に位置する考え方ですね。
武術である以上、敵の攻撃を無力化するという目的はありますが、アプローチの方法が非常に独特です。

それは古来の日本人の考え方に由来すると言っていいのではないでしょうか。
すなわち、外来の異文化をまずは受け入れながら、時間をかけて馴致同化していった長い歴史そのもです。

一見すると現代日本では失われてしまっているように感じられる思考法ですが、こうして古武術の中に保存されているものを解凍し、再び世に伝えていくことができれば素晴らしいと思っています。

続いては4月16日(日)の稽古。

この日は間近に迫った昇段審査に向けて、全体で心構えを共有しました。

基本の形では、礼に始まり礼に終わる所作を再確認。
また、「止め、残心」など古武術の本質ともいえる動きについて、その意義を含めて学び直しました。

昇段審査は技術向上を目指す扶桑会にとって重要な行事です。
昇段対象者のみにとどまらず、ともに修練する仲間全員で、古武術修行者としての真髄を体得していってもらいたいと願っています。

最後は4月19日(木)。

大東流合氣柔術は「柔らかく、滞らず」動くことを目指しますが、それがともすれば、表面を力が上滑りしていくことになってしまいがちです。
武田惣角先生が久琢磨に授けた大東流は、極めの激しい、柔術的要素の強いものであったそうです。
それは、伝授する相手を見て技のエッセンスを変幻自在に変えていた惣角先生が、学生相撲の大関でもあった久琢磨に適合した技を教えたということもあるのかもしれません。

私たちの修練も、単なる形に堕しては本質を見誤ります。
最終的に流れるような動きに洗練されていくとしても、ひとつ一つの動きによって確実に相手の芯に力を伝達することを忘れてはいけないのです。

柔らかくはあっても、厳しく、確実に。
古き教えを仰ぎながら、技術向上を目指していきます。

其の四百二十四 踏み込む 大東流合気柔術 扶桑会 
大東流合気柔術では、攻撃を受けた時の対応がその多くを占めるが、「掛け手」と呼ばれる技法の体系も存在する。
つまり、こちらから攻撃を仕掛け、それによって相手の体勢を崩し、あるいは心理的な動揺を誘ってこちらの意図を完遂していくのだ。

こちらの攻撃でダメージを与えようという企図は希薄であるから、打撃など攻撃そのものの威力を云々することは重要視されない。
いわば、「フェイク」の攻撃を仕掛けることによって相手を動かしていく。
今回の動画のタイトルは「踏み込む」である。
よくその内容を見ないことには何のことか分かりにくい表題であるが、これは「罠(わな)」となる攻撃を、「あたかも本物のように見せることが肝心である」ということを伝えたかったのだ。

具体的には手刀の掌を上に向け、親指と四指の先で相手の目を薙ぐように斬り込んでいく。
手刀の動き出しは帯剣している腰のあたりが望ましい。
視界を外れている下方向から、まっすぐ伸びていく攻撃である。

これは、もちろん相手に回避行動を取らせることを目的としたものなのではあるが、その前提を気取られてはいけない。
しっかりと「踏み込み」、気迫をもって斬り込んでいく必要がある。
この動きに相手が大きく反応すれば、次の動きで合気柔術「手鏡」の技法が活かせるのだ。

人間の身体的弱点を突くのみならず、心理的な盲点を積極的に利用、攪乱していく。
明治期に武田惣角先生が伝えた日本古流武術の奥行きに驚嘆せざるを得ないのである。
稽古日誌 令和4年8月7日 11日 13・14日夏合宿 大東流合気柔術東京稽古会 
大東流合気柔術東京稽古会の稽古日誌。
今回は夏合宿を含む8月前半の稽古の記録です。
まずは8月7日(日)の稽古。

正面打、胸取を捌いて制する技を中心に、間合いの取り方、重心の移動を研究しました。

基本の動きではありますが、そこには数多くの技法が重層的に含まれます。

初心者からベテランまで、常に自分の未踏領域を研究する心を持って稽古していきたいものです。

続いては8月11日(木・祝)の稽古。3時間の拡大版で修練しました。

大東流の基本的な身体操作である「手刀」の使い方をテーマに。
いつも行う手刀詰にも片手取、両手取、立合、半座などいくつもの別法があります。

力づくで動くのではなく、剣を使うように柔らかく、鋭く。

そうした精確な動きが、攻めの厳しさにつながります。古武術習得に必要な、大事な修練となりました。

続いては夏合宿です。
今年はお盆のさなか、8月13~14日の実施となりました。

今年のテーマは、正面打。一カ条から四カ条まで大東流の体系的な考え方を研究します。

普段の稽古ではなかなか取り組めない技にもじっくりと時間をとって・・・

初級技との違いを知ることで、技の本質を理解することにもつながっていきます。

また、合宿ならではの稽古として当会に伝わる秘伝書を解読しての総伝技の研究も行いました。
武田惣角先生直伝の技術を、当時大変貴重だった写真に収めた、非常に重要な書物です。

大変興味深い稽古をすることができました。

稽古の後は、久しぶりの懇親会を兼ねての夕食。
夜半まで楽しい話が続きました。

東京稽古会では一年に一度の合宿を恒例としています。
来年もまた有意義な合宿ができますように。

其の三百七 千鳥で張る 大東流合気柔術 東京稽古会 
この数回にわたって当身で張りを作り、相手の筋肉を伸ばして動けなくする操作法を積み上げてきた。

今回の「帯落」という形は、それらの技術を複合的に組み合わせて使う、いわば集合体のようなもの。
ひとつ一つを確認しながら修練してもらいたい。
衣紋締といって、小手と前襟を使って頸動脈を締めてくる攻撃方法だが、このように首を締められることが実際に起こるとは考えづらい。
現実には当然、締め込まれる前に対処をするはずなので、やはりこれは形の修練のために拵えられたものと割り切って稽古する。
ただ、この体勢で鍛錬を積むことで実際に流動的になった動きの中でも最適に対処する感覚を養成できることを忘れないでほしい。

形稽古は、格闘技の実戦諸派からはややもすると無意味であると捉えられることも多く、またそれは一面真実でもあるのだが、定型化した攻撃と、流動的なそれとを織り交ぜて稽古することで、欠点を補いつつ、動きの精度を高められる効用もあるということを強調しておきたい。

帯落については、動画で触れられている身体操作を是非研究してもらいたいのだが、ここでは「千鳥足」が生む複合的な動きの利点を話しておきたい。
初動で当身を打って相手の体勢を崩しつつ張りを作る。
これまでに語ってきたことの延長線上にある考え方なのだが、そこにさらに加味される崩しの技術がある。

それは千鳥足によって沈み、相手の重心を乗せてしまうという思考法である。
両手取や正面打を受けて相手の重心の下に入ることは比較的容易ではあるが、首を絞められた状態で腰を効かせ、なおかつ自分の軸に相手を乗せ、さらに腕の張りを使って相手の筋肉を伸ばすのだ。

千鳥足の一挙動で幾重もの罠を相手の身体に施し、無力化してしまう。
この天才的ともいえる発想が武田惣角という武術家の凄味であると思わざるを得ない。
また、こうした思考法の一端を100年あまりを経た現在においても追体験できる素地を継承してくれた先達にも感謝と敬意の念を抱くほかない。
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