扶桑会について
指導者: 石塚嘉 【達人・名人・秘伝の師範たち】
稽古日時:日曜14時半~16時半 / 木曜19時~21時
稽古場所:神道扶桑教 世田谷太祠 東京都世田谷区松原1丁目7−20 【道場紹介】
入会希望者が参加可能な公開稽古は4月29日(月・祝)13時30分から16時30分まで開催します。
場所は 世田谷区総合運動場 体育館 第一武道場です。
扶桑会への入会を希望される方は 左のメールフォームよりお問い合わせください。
扶桑会のYouTubeチャンネルでは「メンバー限定動画」の配信を始めました。一般公開の動画ではカットしている口伝や、道場でしか見せないコツを取り上げています。
興味のある方は 「Aiki-Kobujutsu」チャンネルホームページ にアクセスして「メンバーになる」から購読手続きしてください!
【扶桑会がTV放送されました!】
NHKWorld「J-arena」(↑上の画像をクリックすると無料視聴できます)
【関連商品】 扶桑会DVD「柔(やわら)の力の完成」←Amazonへリンク
【Twitter】https://twitter.com/aiki_fusoukai
【Instagram】https://www.instagram.com/aiki_kobujutsu/
【Facebook】https://fb.com/kobujutsu
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其の四百三十七 腰で絡める 大東流合気柔術 扶桑会 
3月の本稽古では、「掴まれたところをそのまま維持する」技法を取り上げた。
つまり相手に「攻撃できている」と感じさせた状態で力を伝えていく思考法である。
今回はその最後となる操作法となる。
動きに名前を付けるならば「両手取り三カ条小手詰」とでもなろうか。
私たち扶桑会が取り組む大東流合氣柔術は、大東流中興の祖、武田惣角先生および植芝守高(盛平)先生が久琢磨師に与えた、柔術技法を基盤にした技術の体系である。
大阪琢磨会には「総伝」として数百もの技が伝わっている。
一般に後年、武田時宗師によって編纂された「初伝技」には明確な技の名前が付けられているが、「総伝」はそうした呼称はなく、所収の巻数と条文の順序だけが記されている素っ気ないものだ。
技にわかり易い名前を冠すれば表面的な理解には役立つが、その奥に含まれている本質が隠されてしまうこともある。
技を覚えて理合に到らず、ということになりかねないのだ。
その意味で、ある種無味乾燥な「総伝」の呼称にも合理性がある。
さて、長々と前置きを書いてしまったが本題の「両手取り三カ条小手詰」である。
この動きの本質とは何かというと、腕の力を使わずに相手の身体を極め上げていくところにある。
決して「三カ条に小手を詰める」ことではなく、掴まれた瞬間、その初動の中にもっとも重要な理合が含まれる。
すなわち、「腰で絡める」ことだ。
相手に手首をつかまれたとき、手刀を開いて親指を張る。
手刀の峰を相手の掌底の小指側にからみつけるようにして、縦に斬り上げる。
この時、腰を外から内に旋回させることで、相手に全身の力を伝えるところに極意がある。
この動きが効果的に使えるようになると、相手は抗いようのない大きな力を感じ、こちらの手刀にからめとられるように無力化されてしまう。
これが「腰を絡める」操作である。
「掴ませたまま」「絡めつける」といった概念は、いわゆる「合気」に通じるものだと、私自身は考えている。
「合気」については今後積極的に考察を行っていきたい。
其の四百三十三 一体化する 大東流合氣柔術扶桑会 
今回の動画のメインタイトルを「一体化する」としたが、これには二つの意味を持たせている。
いわば「掛け言葉」である。
前回「其の四百三十二 持たせておく」で解説したように、相手に掴まれた手首を振りほどくのでもなく、またぶつけていくのでもなく、ただ相手が掴んできたその感覚を出来るだけ変えないように、すなわち「持たせたまま」にしておくことで相手を無力化する技法がある。
これもその一つであって、相手の身体に掴ませたままの手を触れていくことで体勢を崩してしまう。
動画では腰と膝のあたりに高低差をつけて接触し、丁度自縄自縛に陥ってしまうような形にしていることがわかるだろう。
この操作では、相手に手を触れる際に肩から先の操作で動かしていこうとすると、うまくいかない。
それは腕の筋力に負うところの大きい運動であり、そうした力は出所が悟られやすく、容易に反応されてしまうのだ。
それではどうするか。
ここで、一つ目の意味である「自分の身体を一体化する」操作法が必要となる。
接触点である手首を、身体全体の連動によって操作していく。
このことで相手は力の出所を感知できない。予想外の力が押し寄せてくるような感じを受けて、思わず知らず自分の身体に貼り付けられるといったような感覚を覚えるのである。
さらにもう一つ、これは先ほどと比べると相当に難易度が上がるが「相手の身体と一体化する」操作を行う。
掴まれた手を「持たせたままにする」よりもさらに高度な身体感覚を必要とする動きであり、相手の身体を意図的に動かしていくというよりは、「相手の身体についていく」というべきか。
これについては、私自身も研究を重ねているところである。今動画を見直してみても、その域には到底達していない。
頂は未だ遥か高みにあるが、一歩一歩たゆまず進んでいくつもりである。
其の四百十六 落差で崩す 大東流合気柔術 扶桑会 
<令和5年より、我々は東京稽古会から
「大東流合気柔術 扶桑会」と改称して活動してまいります。
今後ともよろしくお願いいたします>
前回、座ったままで相手を後方に投げ飛ばす「居反」という形を解説したが、それを立った状態で行うとどうなるかということを述べてみる。
両手首を抑えに来た相手の手を逆に取りかえし、人差し指の付け根で急所を攻める。
この急所は手首の「脈所」と呼ばれる部分であるが、自分の腕に力が入ってしまうと相手に力が伝わらない。
むしろ手刀を真っすぐに伸ばすようにして、自然に当たるに任せておくくらいの気持ちで操作すると、非常に威力ある攻めとなる。
この操作が決まれば相手は浮足立ち、腰の位置が上がる。
こうなれば前回解説した、「乗せる」状態へと相手の重心を誘導できる。
次に、立った状態から正座へと自分の体位を変化させる。
これは非常に大きな落差を生む。
相手は自分の重心を奪われているわけなので、これもまた大きな威力を発揮して、たまらず前方へと飛ばされていくわけだ。
ただし、これは自分の体位変化が、地球の引力に沿った「垂直落下」でなければ効果を発揮しない。
つまり、筋力の作用による引っ張りや押し込みがはいってしまうと、とたんに技がかからなくなってしまうのである。
そして、その「垂直落下」を可能にするのは全身を脱力して動けるかどうかにかかっているのだ。
脱力によって感覚を研ぎ澄まし、自分の身体の状態を正確に感知するセンサーを働かせなければならない。
初動で手首を極めるのも、しゃがみこんで投げる時にも、十分な脱力をもって全身の力を使う。
大きく派手に見える技ではあるが、そのパフォーマンスを支えているのはやはり、脱力の思考法であることを銘記していただきたい。
其の四百十四 居反 大東流合気柔術 東京稽古会 
今年最後の更新となる動画解説、今回取り上げるのは「居反(いぞり)」という形である。
跪坐の状態で座っているところに立った相手が両手をとって攻撃してくる。
それを合気上げの技法で自分の重心に乗せ切って後ろに投げ飛ばすのであるが、そこには「乗せて」「沈む」という二つの難関が立ちはだかる。
まず「乗せる」であるが、これは相手の体勢の崩れを利用して、手刀を柔らかく使うことで相手を自分の重心に誘導していく。
押し返したり、引っ張ったりすると相手は反発してしまう。
上手く乗せることができれば、次はその乗せた重心を一気に沈むことで相手の全身を崩していく。
もちろんこの時には、地球の引力に合致した線上にまっすぐ沈むことが重要なのだが、座った状態でそれを行うのは非常に難しい。
ここでは跪坐を瞬時に正座に変じ、さらに腰を地面につけるようにして落とすことで沈身している。
「乗せて」「沈む」という二つの操作を、滑らかに連続して行うところにこの技の要諦がある。
自然体の中で脱力できるよう、修練していただきたい。
其の四百十二 放させない 大東流合気柔術 東京稽古会 
私たちの古武術動画を見た人の反応の中で多く見られるものの一つに
「何故、つかんでいる手を放さないのか」というものがある。
大東流合気柔術に馴染みのない人にとっては、無理のない反応といえるかもしれない。
実際に今回の操作のように、両手をつかんできた相手の手首に手刀を搦めつけるとき、掴んだ側がなかなか自由に手を放すことは出来ない。
動画の中で触れている通り、それは自分から「掴みに行こう」という意思を持っている意思を持っているからであり、さらにはその意思を出来るだけ変容させないように、掴まれた部分を柔らかく使っているからだ。
もっと言えば、相手が掴んできた指を、より自分の手首に食い込ませるようなイメージで脱力を行うと効果的な操作となる。
これらはやはり体感してみないとわかりづらいと思うのだが、人は「反発してこない」動きに対して、追随していく傾向があることを想起してもらいたい。
大東流合気柔術には、こうした心理的な規制を利用した操作系が豊富にある。
一見しただけでは理解できないことも世の中には多く存在している。
理解できないことを一概に切り捨てるのではなく、虚心坦懐に向き合うことが本質に迫る秘訣であると考えている。
其の四百十 両手刀詰 大東流合気柔術 東京稽古会 
相手が両手首をつかんだ瞬間に制圧する。
今回は大東流合気柔術の手刀詰という操作法を取り上げて解説してみたい。
古武術である大東流では相手の攻撃を受け入れることで活路を見出していく操作が数多くあるが、なかでもこれはその代表的なものといえるだろう。
普段は片手取りから操作していくことが多いが、今回は両手首をつかまれたところから動き始めている。
両手取りであっても基本的な部分は変わらないのだが、初動の「ぶつかり」を避けるところが少し難しいかもしれない。
動画で紹介しているように、掴まれた瞬間に両方の手刀を使って相手の腕の外側を斬り上げるのがポイントだ。
仮にそのタイミングを逸した場合には、次善の策として片手取りの手刀詰めと同じ方法論で崩しをかける。
すなわち、一方の手刀で相手の肩を詰め、比較的自由に動かせる側の手刀で片方ずつ処理していく。
冒頭で「相手の攻撃を受け入れることで活路を見出す」と述べたが、手刀で斬り上げる際に、相手がのばしてきた腕にぶつかるように操作するとうまくいかない。
いったん相手の手が伸びてくる方向に引き込むようなイメージで、摺り上げるように手刀を斬り上げてみてほしい。
かつ、手首をつかんで相手が力を籠めようとするその一瞬をとらえて動き出すようにすることが肝心である。
誤解を生むといけないので補足するが、掴まれた瞬間から動き出すというのではなく、常に流動している身体の動きを、その一瞬に手刀を斬り上げる動きに変化させていくのだ。
大東流合気柔術では、滞らず、ぶつからず。
基本的なことだが、大変難度の高いこのことを念頭に置きながら稽古していただきたい。
其の四百八 親指ではずす 大東流合気柔術 東京稽古会 
人体の一部である手(腕)を刀(剣)に見立てて古武術の操作に適用する考え方であるが、そのうちに親指の部分を使うものもある。
いわゆる「峰」である。
今回は大東流合気柔術の初伝一カ条「抜手捕」という形を例にとって動きを説明しているのだが、これもやはり剣を操作するように動くことでその効果を発揮できる。
相手につかまれた手首に対して、全身を連動させて身体を開くと同時に手刀を峰の方に振り出す。
腕の力が強いと、なかなか簡単に外れるものではない。
それを肩から先を脱力することによって、相手からすると拍子抜けするように外れていく。
単純に力を抜くのではなく、身体の芯には力を通すイメージを持って稽古することが肝要だ。
まさに、剣を使う時のような心持でなければならない。
この時に忘れてはいけないのは、「峰」を使うということで親指の方ばかりを活かそうとしないことである。
あくまでも手刀は表裏(刃と峰)一体。全体を使って操作することを心がけてほしい。
其の四百七 親指で絞る 大東流合気柔術 東京稽古会 
手刀が、その構造上「刃」と「峰」の働きを持つことを、これまでに何度か言及してきた。
それぞれに小指(尺骨)側と親指(橈骨)側がそれに対照するのだが、やはり主な使い方として「刃」のほうが前面に出ることが多い。
今回は「峰」の使い方に焦点を当てて解説を加えてみたい。
動画にあるように、この動きでは両方の手刀を使って相手の身体を攻めている。
中でも今回重要なのは親指の外側、すなわち「峰」を使って相手の肘の急所を引き付け、無力化している点だ。
同時にもう一方の手刀は「刃」を使って相手の手首を斬り込んでいるが、繊細で鋭い力を出せる「刃」に対して、「峰」での引きつけは非常に力強い働きができる。
もちろん、腕力で引きつけるような使い方ではなく、あくまでも「剣の理合」に基づく体幹を用いた操作であることが前提である。
ここでは親指を立て、その付け根のあたりに相手の肘を捉えることがコツとなる。
また、上腕の筋肉を使わず脇を締めると、非常に強い力が発揮される。
さらに「刃」と「峰」の力のバランスをとることで相手の身体は鋭く引き絞られ、肩から腰にかけての可動域を狭めることができるのだ。
剣の「刃と」峰」を二つながら効果的に併用するこうした操作法を研究するほどに、大東流合気柔術の奥深さを痛感する。
其の四百一 入身投 大東流合気柔術 東京稽古会 
初伝一カ条「入身投」。大東流合気柔術に特徴的な、自分が坐位で、相手が経った姿勢で攻撃をしてくる、いわゆる「半座半立」の形である。
この操作にも、実は「沈む」動きが大きく関係している。
初動で大切なのは相手の攻撃(両手取り)を受けた時、それを押し返さずに自分の腰に乗せたまま前方に膝行することである。
これを力で対抗すると、必ず失敗する。
自然体であることを要諦とする合気柔術にあって、立った状態で前傾して攻撃を加えてくる相手は、制しやすいのである。
逆説的に聞こえるかもしれないが、動画で行われている操作をみてもらうとわかるはずだ。
前方に重心移動したら、その場で180度転換をして相手と背中合わせになり、手刀を前方に斬り落として投げる。
この転換の際に、一瞬立ち上がるのであるが、「沈む」動きはここで用いられる。
腰に乗せた相手の重心を、一瞬沈むことで体の崩れを誘い、それに乗じて大きな方向転換を行うのだ。
地球の引力に合致した真下への沈み込みである必要があるのは言うまでもないが、やはり腕力に任せて振り回そうとするとうまくいかない。
脱力を心がけて、鍛錬してほしい。
其の三百九十八 落下する 大東流合気柔術 東京稽古会 
今回の動画解説は「つながる」ということを中心に述べてみる。
大東流合気柔術の技術体系に特徴的なことの一つに、無理なく力を伝えていくという考え方がある。
力づくで制圧するのではなく、一見不思議に思えるようなかたちで相手を無力化していく。
そのために必要な要素として、相手の発する力を受け止め「つながる」という操作を行う。
言葉だけ聞くとややうさん臭く感じられるかもしれないが、実際の感覚はまさにこの語感に近い。
ここで重要なことが、自分がしっかりと自然体をとれているかどうかである。
正しい姿勢で重力を素直に感じられる体勢でありながら、相手の力を自分の中心に流し込むように受ける。
接点につながる腕や上半身は十分に脱力して、柔らかく伸ばすことで相手の体幹部分に刺激を与える。
この操作で、相手を自分の重心に乗せてしまうのだ。これが、われわれが考えている「つながる」という動きである。
「つなげる」ことで、この動画にあるような大きな崩しを、比較的小さな力で実現することができる。
合気柔術に対して「ヤラセではないか」といわれることがよくあるが、古武術を未経験の人にとってはそれも無理からぬことかもしれない。
動画では上級者の動きとして、接触した瞬間に短く、軽い動きで相手の身体とつながる操作も紹介した。
初心者用の動きと基本の考え方は同じである。ぜひ継続して取り組んでいただきたい。